絵の委託販売、手数料の見方 — 数字の前に確認したい三つの条件
絵の委託販売を考えるとき、最初に目が行くのは手数料の数字だと思います。20%と30%が並んでいれば、20%のほうが有利に見えます。
けれども実際には、手数料の数字だけで比べることはできません。同じ「手数料20%」でも、条件次第で手元に残る額は変わりますし、そもそも受け取れる時期が違うこともあります。
この記事では、数字の前に確認しておきたい条件を三つに絞って整理します。
条件1:手数料のほかに費用が発生しないか
手数料が低くても、別の名目で費用がかかる仕組みは珍しくありません。確認しておきたいのは次のような項目です。
- 掲載料・登録料・月額の利用料
- 撮影費、額装費、紹介文の制作費
- 展示スペースの利用料
- 作品を送る際の輸送費と、返却されるときの輸送費
- 決済手数料や振込手数料を、どちらが負担するのか
「手数料15%、ただし月額の掲載料が別途」という条件と、「手数料25%、ほかの費用はなし」という条件では、一年間の販売点数によって有利不利が逆転します。
とくに在学中は、売れなかったときに持ち出しがあるかどうかが続けられるかどうかを分けます。売上が立つ前に固定費が出ていく形は、制作の余裕を削ります。
条件2:価格の決定権が誰にあるか
手数料と同じくらい重要なのが、価格を誰が決めるのかという点です。
作家の希望価格がそのまま販売価格になるのか、それとも販売側が上乗せして決めるのか。上乗せする場合、その分は誰の取り分になるのか。ここが曖昧なままだと、あとから「思っていた金額と違う」という食い違いが起こります。
確認しておきたいのは、次の二点です。
- 希望価格を出すのは自分か、相手か
- 最終的な販売価格を決める前に、自分の合意を取る手順があるか
値下げやセールについても同じです。相手の判断だけで値下げできる契約になっていないか、目を通しておくとよいでしょう。
条件3:入金の時期と条件
売れてから自分の口座に入るまでの期間は、契約によってかなり幅があります。
- 購入者が受け取りを確認した後に支払われるのか
- 月末締めの翌月払いなのか
- 一定額に達するまで支払われない仕組み(最低支払額)はないか
金額が同じでも、三ヶ月先に入るのと二週間で入るのとでは、画材を買い足せる時期が変わります。学生のうちはとくに、この差が制作の速度に直結します。
所有権と著作権は、別のものです
委託販売でよく混同されるのが、この二つです。
作品という「物」を誰が持っているかという話(所有権)と、その作品を複製したり、印刷物やウェブに使ったりする権利の話(著作権)は、まったく別のものです。作品が売れて所有者が変わったとしても、著作権が自動的に相手のものになるわけではありません。
著作権の基本的な考え方は、文化庁が公開している教材で学ぶことができます。
契約書では、次のあたりを見ておくと安心です。
- 撮影した作品画像を、販売側が広告やSNSでどこまで使えるのか
- 使用できる期間は、委託の終了後も続くのか
- 作品がグッズや印刷物になる場合、別途の合意が必要か
「宣伝のために使う」という一文だけで、期間も範囲も書かれていない契約は、後から解釈が分かれます。
数字を並べて考える
条件を揃えたうえで、はじめて手数料の数字が比較できるようになります。
たとえば販売価格が5万円の作品なら、手数料15%で手元に残るのは42,500円、30%なら35,000円です。差額は7,500円。この差を大きいと見るか、撮影や集客を任せられることの対価と見るかは、そのとき自分に何が足りないかによります。
私たちの条件を書いておくと、手数料は15%で、作家の取り分は販売価格の85%です。掲載は無料で、売れなかった場合の費用はかかりません。作品は作家の手元で保管していただき、購入者の受取確認後、1週間以内にご指定の口座へお振り込みします。
一般的なギャラリーでは作家の取り分が40〜50%程度になることもあり、それと比べたときに作家の側に残る割合を高くしたい、という考え方で設計しています。
条件の詳細は作家募集のページに、販売価格の考え方は料金のページにまとめています。
おわりに
手数料は、安ければよいというものではありません。何を引き受けてもらい、そのために何を払うのか。その対応関係がはっきりしている契約であれば、数字が多少高くても納得して続けられます。
逆に、数字が低くても条件が曖昧な契約は、後から必ず確認の手間が発生します。比べるべきは数字ではなく、条件の明確さのほうです。
売り方そのものの選び方については、美大生が作品を売る方法もあわせてご覧ください。